村山早紀著の『桜風堂ものがたり』。

序章で登場する捨てられた三毛の子猫アリスの話で心が物語に持っていかれました。

けれど、この物語は猫の話ではありません。

書店員の物語です。

銀河堂書店で起きた万引き事件が思わぬ事態に発展するのです。

万引き少年を追いかけて事故を引き起こしてしまいます。

少年にもいろんな事情があり、深く反省して親も誠意ある態度での謝罪をしたのです。

このことで世間の目が書店員の月原一整に向き非難の嵐が巻き起こります。

私は、非難の声をあげる人に憤りを感じました。

万引きはいけないことです。だからと言って、少年を追い込むまで追いかけてしまったことも非はあったかもしれません。

けれど、一人の書店員をそこまで非難することはないです。

どんな人かも知らないというのに、おかしいです。周りに迷惑をかけると辞めてしまうまで追い込むなんて酷いです。

正義だと思い立ち上がる世間の声の容赦ない仕打ちは実際にありえることです。

なんだか胸の底に澱が溜まっていく気がしました。

書店員仲間は一整のせいじゃないと手を差し伸べます。温かい仲間がいいです。

泣けてきます。

このことをきっかけに田舎町の書店で働くことになるのです。

桜風堂書店は、ご老人と孫の透がいます。

ただ老人は入院していて、孫が一人でいる状況でした。そこには子猫のアリスもここに来ていました。

ある意味タイミングがいいと言えます。

この孫の境遇が悲しいのです。

一整と透とアリスは悲しい境遇にあるという点で共通する存在のような気がしてなりません。

けれど悲しいだけではありません。

一整は辞める前に売り出そうとしていたある本を残された書店員に託します。

本当に温かな書店員仲間です。

一致団結してその本を売り出そうと奔走します。

本に対する愛情を感じました。

感情移入してしまって、涙、涙、涙でした。温かさに涙するのです。

温かくて優しくて春風にでも包まれているような心地よさがこの物語から伝わってきました。

それに、本書はあとがきも感じ入るものがあります。

この物語は、著者と書店員とが織りなす物語だと言えるのではないでしょうか。

感動をありがとうと伝えたいです。